髪の毛を切りました。
さっぱりなわけです。
久しぶりに髪の毛を触ってもらって、最後に髪の毛をいじってもらった時を思い出しました。
だから、その時のことを書いておこうと思います。
今年は夏フェスに行きました。
バンドメンバーとそのお母さんと、4人で。
ちなみに通常、バンドメンバーは4人です。一人は本格的に退学寸前で、誘えなかったんだと聞きました。
進学できてよかったよ……。
お母さんと私は二人部屋だったのです。
シンプルに、初対面な友人の母と二人部屋って字面強いなと思いながら、楽しみにしていました。
想像通り、というかそれを優に上回っちゃうくらい、驚くほどいいお母さんで。
とんでもなく聖人で、びっくりしました。
二人で結構色々なことを喋りました。
大人と話すのって、なんだか安心して好きなんです。
バンドの話をして、友人の話をして、女子の裏話をして。全部聞いてくれました。
お母さんが何でも知っていて驚きました。私より、通っている学校について詳しい説すらあります。
で、ふと、髪の話になったのです。
「とんでもなく毛量が多くて、はねちゃうんですよね」
そんなことを話していたら、
「明日、ちょっと巻いてみよっか」って。
私はとんでもなく髪のアレンジとかが下手くそなんです。
幼い頃から工作ばかりやってきて、多分根は器用なはずなんですけど、お洒落とか、髪のこととかになるとめっぽう駄目で。
そもそも興味がないから、全く練習したことないのが原因なんですけどね。
かつ、私の母もヘアアレンジができません。
小学時代は、ずっと一本縛りで生きてきました。
今の私は一本縛りですら苦手なので、母の方がまだできます。
一本に結んでくれるだけで嬉しかったけど、髪を編み込むとかはしたことがありません。
というか、多分編み込みできないです、私のお母さん。
そんなこと言ってる私も、もちろんできません。
だから髪をいじってもらえるのは、本当に嬉しいことなんです。
そう言ってもらえただけで嬉しくて、明日がもっと楽しみになりました。
朝起きて、その日の午前はほとんどやることがなくて。
「髪の毛やろっか?」と言われました。
覚えてくれてる……!
慣れた手つきで髪の毛を取って、くるくるとコテを使って、髪がどんどんと巻かれていきました。
ごわごわで毛量が半端なく多くて、めちゃくちゃ広がるこの髪が、言うことに従って動いてる。凄い。
「いいねぇ」って言ってもらえて、やっぱりすごく嬉しくて。
堪えきれなくて、へへと笑いました。
自分の髪は量が多くて正直好きじゃないけど、こうやってやってもらえるのならいいかなって。
以前、お母さんの息子であるメンバーが、お土産をくれました。
それはそれは暇だった、春休みの話です。
他のメンバー3人はダラダラと寮にいて、ただの冗談のつもりで「お土産待ってるねー」なんて話していました。
そうしたら本当に買ってきてくれたんです、もう頭上がんない。
だいぶ後になって貰った、それを開けて驚きました。
シンプルで可愛らしい、一つのキャップ。
それは、以前愛用していてボロボロになったものと、どことなく似ていたんです。
前使っていたキャップは、夏休みに自分のお母さんから貰ったもので。
2年くらい毎日のように使っていて、もう色褪せちゃったんですよね。
だからこのキャップを貰って思いました、この人わかってるやって。
ちゃんとお洒落好きの彼なだけあるなって。
私より圧倒的にお洒落だし、まあそれは、他のメンバーにも言えるんだけどさ。
「あのキャップ、めっちゃ嬉しかったです」
そんなことを、髪をいじってくれているお母さんと喋ってて。
「『あんまり女子っぽいのじゃないのがいい』って言ってたのよ。それ可愛いよねー」
よくわかってる。お母様の息子、めちゃくちゃわかってる……!
そうやって思ってくれていたのを知って、本当に嬉しかったわけです。
今日は髪を切って、縮毛矯正をしました。
理由は単純で、以前友人とお泊り会をした時に、凄く勧められたから。
いつかやろうと思って、折角だからこの夏が終わる前にやることを決めました。先延ばしにしたらやらないもんな、この人。
そうしてかけました、縮毛矯正。人生初。
前髪がピーンとしてて、髪の毛がサラサラになって。
もう嬉しいったらありゃしません。
これで毛量が多くて悩むことも減るぞって。
ただね、ちょっと切りすぎまして、確実に。
美容師のお姉さんに梳く?って聞かれて、もうガンガン梳いてください!と言ったのです。
そうしたら、顎下くらいまであった髪の毛がわっさわさと消えていき。
顎と同じくらい、もしくは上くらいまで短くなりました。
去年の今と、全く一緒です。
私はボブが大好きなんです。
何が好きかって、地面に写る、そのシルエットです。
正面は鏡に立たないと見えないけど、自分が一番よく見るのは影だから。
そのため髪を切るのが好きなんですけど、写真を撮るとなると別で。
もう少しくらい長くないと、それはそれは写りが悪くなるのです。幼いと言うか。
まあ大人っぽいのは性じゃないから、全然いいのだけれど。
折角メンバーたちが、私の動画も撮るねって言ってくれてるのにさ。
でもいいのです。
髪切れたし。大好きなボブになれたことだし。
でも、今度友人のお母さんに会うときまでには、ちょっと伸びてるといいな。
なんて、矛盾したことを思っている自分がいます。
美容室に行った帰り道。
誰もいない公園の前を通りました。
急にブランコが漕ぎたくなって、一人で座りました。
頭の中では夏の歌が流れてて、外では蝉の声が響いていました。
少しぶかっとなったキャップを被ってブランコを漕いでいたら、キャップが飛んでいきそうになって。
なんだか可笑しくて、笑いました。
世の中には、カメラで収まらないくらいの些細なことが溢れてて。
いつかはゴミ溜めに捨てられるような、そんなことが山ほどあります。
だけど、そんな思い出を一つ残さず拾い集めて、全部取っておきたいなって。
正直記憶力ないので、全ては無理だけど。
こうやって言葉に起こして、忘れないようにと大切に思って。
そうすれば、もうないはずだった記憶も、少しは残ると信じています。
けれどやっぱり、カメラは好きなので。
動画なりなんなりいっぱい撮られる覚悟で、でもそれよりも、私がもっと撮ってやるぞって思っています。
去年の私と、全く同じ髪型になって。
でも、去年と違う私がいます。
去年の今頃は、友達作らなきゃ、またぼっちになっちゃうよって、思っていました。
面白くもないのに笑ったり。まあ、自分なりに頑張っていました。
仲良くなった後に、友人にこう言われました。
「初めの方の(私)、結構怖かったよ」
確かに、と今になって思います。
ピリピリしてた、どうにかしなきゃって。
でも、今は違くて。
自分のことを少しでも考えてくれている友達が、有難いことにいるから。
前の学校で、ぽろっと言われたことがあります。
「(私)は笑ってばっかりだよな、言葉わかんないもんな」って。
多分言った人に悪気なんてなくて、本当にその通りで、悔しさすら感じなかった。
去年の今頃もきっと、自分に嘘をついて笑っていた。
でも、今はさ。
本当に楽しいと思って、笑えることが増えたんだ。
だから、嬉しいんです。
前のキャップは、人目を避けるために被ることも多くて。
でも今回は、きっと違います。
……待てよ。
前髪はどうするかを聞かれて、どうせすぐ伸びるよなと思い。
「オン"ザ"眉くらいでお願いします」
オン眉は流石にカバーしきれないだろうと、そう言いました。
私は忘れていたのです、矯正した事実に。
もちろんばっさり短くなって、一瞬SHISHAMOのボーカルかと頭をよぎりました。
調べてみたら、もっと短くて、こんなもんじゃなかったけど。
今思えば、サバシスターのボーカルもオン眉だし。
ガールズバンドのボーカルはオン眉説を検証してみたら、一瞬でSilent Sirenが浮かんで、その説は見事に消え去りました。
オン眉が似合う人って凄いよなと思いながら、
前髪可愛いね、短い方がいい。みたいなことを、美容師のお姉さんに言われたのを思い出して、我に返ります。
今まさに、キャップ被って隠せるーとか思ったけど。
短い方が可愛い、のか……?
まあ、でもやっぱり、人目を避けるためではなくて。
そうやってちょっと成長出来たらなんて、今はまだ新しいキャップを見ながら、そう思います。